信濃毎日新聞 2005/10/24掲載
JR富山駅にある北陸電力科学館「ワンダーラボ」を、私は毎年春と夏の二回訪れる。
実験の指導と、発表コンクールの審査をしているが、ここほど子どもたちが毎日伸び伸びと研究に励み、楽しく実験をしている科学館は少ない。
館内にはエジソンの発明品の展示などもあるが、この館の特長は、館内を子どもたちの研究のために開放していることである。
付近の小・中・高校生は夏休み中、毎日ここに来て、自分の研究テーマに取り組む。
例えば「ドライアイスの研究」なら、液体窒素やドライアイス、水素や酸素ボンベといった必要な材料を自由に使える。
館の数人のスタッフと富山大学のボランティアの学生が指導にあたり、必要なアドバイスをしてくれる。
それぞれの研究の結果は夏休み中に発表する。
各人が実験ブースを作り、二時間ほどデモ実験をして成果を報告するのだ。こうした研究方法と発表は定着し、小学生時代から通っていたという高校生が現在でもそこで活動を続けている。
彼らの研究態度や成果の発表の素晴らしさは、学年が上になるに従って目を見張るものになっていく。
一人一人の子どもたちの創造性が存分に伸ばせる環境がここにある。
実験し、失敗し、考察し、文献を調べ、スタッフの助言を求め、時間の制限もなく、のびのびと実験を楽しみながら過ごす。
この施設は彼らにとってはまさに宝の山である。
わたしは毎年その発表を見て、生徒たちの自信に満ちた姿に驚く。
ノーベル賞を受けた島津製作所の田中耕一さんもこの地で育ったというが、彼に続く科学者も、こうした地域社会の科学研究に対する熱意から生まれるのではないだろうか。
今年5月に同館で「理科の大運動会」として50種類の面白い実験が展示された。
われわれ「おもしろ科学工房」のスタッフ10人もマイクロバスで六時間かけて富山に行き、そのイベントに参加し、研修してきた。
飯田の「おもしろ科学工房」にいるスタッフが連日「巡回科学実験教室」や「理科実験ミュージアム」を展開しているのも
将来「ワンダーラボ」に負けない、子どもの創造性を伸ばす科学館を飯田に作るための準備といえよう。
※ この記事は信濃毎日新聞社様のご協力をいただいて掲載しています。