信濃毎日新聞 2004/04/26掲載
1999(平成11)年から飯田市教育委員会は、飯田市及び下伊那郡内の小・中学校を対象に「巡回科学実験教室」を始めた。
その実験内容は「100m高く飛ぶモデルロケットの打ち上げ」「超低温の世界」「静電気の不思議」など
なかなか学校ではできない実験で、各学校の要望に応じて、理科や総合学習の時間に行っている。
各人手にしたモデルロケットエンジンに厚紙を巻いてロケット本体とし、先端のノーズコーンや三枚の尾翼をつけ
パラシュートを作って本体に入れ、各人が発射台にセットされた自分のロケットに、友達のカウントダウンとともに点火する。
シューという発射音とともに、空高く飛び上がる。
やがてパラシュートで落下してくるロケットを回収するために、生徒は歓声を上げて飛び出す。
現在まで5年間、すでに数千人がこの実験に参加している。
ロケットの原理を知り、宇宙への夢を抱かせるこうした楽しいロケット教育は、米国ではすでに50年も前からなされているのに
日本の学校において、授業に取り入れているのは、残念ながら飯田市のみではないだろうか。
飯田市教育委員会はさらに、科学教育ボランティア「おもしろ科学工房」を組織した。
現在43人のスタッフは、主婦、市の職員、元教員、会社の技術者などからなる。
ロケットの打ち上げ装置などは、みなスタッフの自作である。
ところでわれわれはすでに多くの児童、生徒たちとともに、こうした理科実験を楽しんできたが
すべての子供たちが、理科が好きで好きでたまらないと思っていることを実感する。
科学の不思議さ、美しさ、面白さを、こうした多感な小・中学生時代に体験させることこそ
創造性を伸ばすために最も必要なことであり、一人一人の生徒たちに、考える素材を与えることこそ
われわれ教師、父母、地域社会の責任だと思う。
さらに一昨年、同市にオープンした「かざこし子どもの森公園」では、土・日曜日に「理科実験ミュージアム」を親子対象に開いている。
スタッフは交代で、連日「実験教室」で学校を回り、週末は公園の「ミュージアム」で実験を指導している。
理科嫌い、理科離れが叫ばれて久しいが、全国に先駆けて、飯田市教育委員会が行っているこのプロジェクトこそ、まさに画期的なものといえよう。
※ この記事は信濃毎日新聞社様のご協力をいただいて掲載しています。