信濃毎日新聞 2005/02/21掲載
飯田市の「かざこし子どもの森公園」で、毎週土・日曜日に行われている理科実験ミュージアムのワークショップを運営する
40人のボランティア「おもしろ科学工房」に、一昨年から3人の中学生が加わっている。
飯田東中学校科学部の生徒たちで、3人とも、小学生の時からこのワークショップに何度も参加するリピーターだった。
彼らは中学生になった機会に、今度は小学生の実験を助けるボランティアスタッフとなったのである。
ワークショップのメニューは現在50種類ほどあるが、3人ともその多くの実験をマスターし
更に各自のテーマを決めて、実験室の中にある器材を自由に使い
付属の図書室の実験書を読みながら、次々と新しい実験に取り組んでいる。
先日、テレビの取材に対して、彼らはここを「宝の山」と言っていた。
その言葉から、科学に対する興味と探求心のほどをうかがい知れた。
われわれ大人のスタッフが見守る中、3人の中学生はそれぞれの個性を伸ばし、すばらしい創造性を発揮している。
今となっては「おもしろ科学工房」に欠かせないスタッフだ。
3人はそれぞれ将来、技術者、ロボット研究者、地質学者を目指しているという。
しかし大変残念なことに、現状は受験のために、中学3年生ともなると、部活動も制限され
好きな実験に取り組むことができなくなる。
彼らにせっかく芽生えた、科学の面白さを究めるチャンスが中断されてしまうのだ。
全国的にみても、中学校の科学クラブは運動クラブに比べて極端に少ない。
科学の好きな生徒たちはどこの学校にも必ずいるはずなのだが、これもまた残念なことに
そんな生徒たちへの適切な指導はなされないまま放置されている。
われわれ大人の責任は、こうした生徒たちが自由に研究できる場(=「宝の山」)を与えることではないだろうか。
また学校には、そんな「宝の山」が飯田市の「かざこし子どもの森」にあることを生徒たちに知らせ、利用をすすめてほしい。
われわれスタッフは、喜んで実験室を開放し、科学の魅力を感じ始めた若者たちの研究を助けるために、常に待機している。