豪雨―子どもへの対応に感動

信濃毎日新聞 2004/11/08掲載

今年は例年にない大型の台風が日本列島を直撃して、大きな被害をもたらした。
雨や風も強く、特に九月初めは何度か豪雨に見舞われた。
われわれ飯田市のボランティア「おもしろ科学工房」が毎週土・日曜日に開く「かざこし子どもの森公園」の「理科実験ミュージアム」にも、ある日突然そうした豪雨が襲った。

園内にはほとんど人は見当たらず、閉館まであと一時間になっていたので、私は図書室に入って文献を調べていた。
ふと子どもの声が聞こえたので図書室を出てみると、異様な光景が見えた。

ボランティアで市職員のKさんは上半身裸で、また小学校低学年の男の子二人は真っ裸で震えていた。
Kさんはタオルで二人のずぶぬれの体を拭いてから、自分が着ていたシャツと下着を二人に着せていたのである。
そばにあった木の枝にはぽたぽたと水が滴る二人のズボンやシャツが干されていた。

私は感動した。
これほどすばやく子どもの危機に対応し、しかも自分が着ているものを提供して助けるという行為はなかなかできるものではない。

私は、Kさんが寒さで風邪をひかないかと心配になった。
それで、Kさんの車に二人の子どもを乗せ、上の公園事務所に連れて行った。
二人を預けて私とKさんは近くの温泉に行き、体を温めながらいろいろ話をうかがった。

彼は1995年の阪神淡路大震災の際
役所に休暇届を出し、仲間とともにただちに神戸に向かって、数日間ボランティア活動をした。
以来現在まで、彼は毎年神戸を訪れて交流を深めていることも知った

そのKさんは先日、神戸の慰霊祭に参加した際、多くの子どもたちがペットボトルのちょうちんを手に行列を作っていたのを見たそうだ。
大変美しく、一本のろうそくで一時間も輝いていたという。

これは停電のときにとても役立つと思い、11月の「理科実験ミュージアム」の実験メニューに加えた。
実験日時や作り方は「おもしろ科学工房」ホームページをご覧いただきたい。

ペットボトルちょうちんの小さな光は、人に対する温かい思いやりの光でもあるように思える。
そうした思いやりの光が束になり、今般の台風災害や新潟県中越地震などの被災地に明るさをもたらしてほしいと願ってやまない。

※ この記事は信濃毎日新聞社様のご協力をいただいて掲載しています。

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