科学嫌いな子供はいない

信濃毎日新聞 2006/03/20掲載

1999年、飯田市教育委員会は市の科学教育ボランティア「おもしろ科学工房」とともに
「巡回科学実験教室」という出前授業を始めた。
対象は飯田市及び下伊那郡の小中学校で、25種類の実験メニューから好きな実験を選んで
「理科」や「総合学習」、「選択理科」などの時間に出前授業を行う。

今年で8年目に入ったが、この7年間に730教室を巡回した。
学校の理科の時間ではなかなかできない内容で、科学の不思議さ、面白さ、美しさをそれぞれ生徒が体験する。
授業で使用する実験器具は、クラスの人数分の工作キットも含めてコンテナに収納され
市内の小学校の空き教室に保管されている。
これらを前日に巡回する学校に運び、当日はスタッフ数名が交替で学校に言って実験を行う。

私は講師として参加し、730回すべての実験を行った。
飯田市から30キロもはなれた山の中の学校では子どもと先生が6人ずつというところもあれば
300人の全校生徒を体育館に集めてサイエンスショーを行うところもあった。

ところで、これだけ多くの学校、多くのクラスに出前授業をして思うことは
子どもたちの誰一人として理科の嫌いな者はいないということである。
どこの学校でも期待に満ちてわれわれを待ち望み、科学を心から楽しんでいる。
その様子を見るとつくづく、教育委員会、学校、地域社会が一体となって科学教育に取り組む必要性を感じる。

しかし、残念なことに中学校は部活動のほとんどが体育系で、科学系は顧みられず、減少の一途をたどっている。
出前授業の要望もいたって少ない。
どこの学校にも必ず数人はいるであろう科学好きの生徒たちは、放置されたままである。

従って、今年のわれわれの目標は、出前授業の更なる充実と、科学実験と工作の好きな生徒に研究の場を提供することである。
自分の好きなテーマを研究できる「理科実験教室」を「かざこし子どもの森公園」につくり
県内すべての中学生に開放したいと考えている。
学校も家庭も真剣に子どもたちの個性を見つめ、われわれとともにそれを伸ばす努力をしてほしいと心から思う。

※ この記事は信濃毎日新聞社様のご協力をいただいて掲載しています。

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