ペンシルロケット、打ち上げよう

信濃毎日新聞 2005/12/05掲載

小・中学生にロケットの科学的原理を理解させ、宇宙への夢を持たせるには、一人一人が自作でき
各人が点火し、皆でカウントダウンする中
100メートルも高く飛ぶ小型のペンシル型モデルロケットの打ち上げが最適であろう。

米国では60年も前から、学校や地域社会でこうしたモデルロケットが打ち上げられている。
一人の落ちこぼれ高校生がロケット作りに夢中になり
ついにはNASAのロケットエンジニアになったという事実も、小説「ロケットボーイズ」や映画「遠い空の向こうに」で日本にも紹介されている。

日本では20年ほど前からマニアがモデルロケットを使ったロケットを打ち上げているが
学校教育として定期的に打ち上げている学校はない。
それは米国製のロケットのキットを組み立てるだけなので高価であり、またなんらの創造性を発揮する場もないことが原因であろう。

そこでわれわれは一工夫した。
安全のためにエンジンだけは固体燃料の小型のA型ロケットエンジンを米国から購入するが、ロケット本体はカレンダーの厚紙をまいて作る。
先のとがったノーズコーンはフィルムケースを利用し、飛行の安定を保つ底部の三枚羽フィンは工作用紙にした。
そして30人のクラス全員が各自工夫をこらした大小さまざまなロケットを作り
「おもしろ科学工房」が製作した、ロケット10本が連発できる装置で発射。
一時間で製作から全員の打ち上げ終了まで可能になった。

ポリ袋でパラシュートを作ってロケットに入れ、各人カウントダウンに合わせてスイッチを入れる。
発射音とともに、真上に100メートルも飛び上がってパラシュートで落下する自分のロケットを追う子どもたちの歓声は心地よい。

飯田市と下伊那郡の学校では、すでにこの七年間で4000人余の子どもたちがロケットを打ち上げている。
飯田市教育委員会がロケットエンジンの費用を負担し、学校側の費用負担はほとんどない。
日本でも毛利衛さんや向井千秋さんなど、多くの人々が宇宙体験をしているが、学校での科学教育でも、長野県全域でぜひ取り入れてほしい実験である。

50年前、故糸川英夫博士によって日本で初めて打ち上げられた小さなペンシルロケット―――。
それと変わらぬ性能を持つ、この小型で安全なロケットの製作と打ち上げによる感動を、一人でも多くの子どもたちに体験させたいものである。

※ この記事は信濃毎日新聞社様のご協力をいただいて掲載しています。

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