子どもの創造性・・・芽生えるとき

信濃毎日新聞 2004/08/02掲載

飯田市「かざこし子どもの森公園」では、毎週土曜日、日曜日に「理科実験ミュージアム」が開かれ
10時から15時まで、随時、誰でも実験に無料で参加できる。
このミュージアムでは手を使い、頭を使って、一人一人の子どもたちが物を作り出すように工夫されている。

毎回数人の同市科学教育ボランティア「おもしろ科学工房」のスタッフが交代で指導に当たる。
われわれ親や教師や地域社会の大人の責任は、子どもたちに考える素材を与えることだと思う。
どの子も皆、作り考えることが好きで、創造性に満ちている。
ただ、考えたり作ったりする素材が身の回りにないのが現状である。

このミュージアムにはそれがある。牛乳パック、ペットボトル、フィルムケースなど
十数種類の素材がそれぞれ数百、数千個と用意されている。
参加した子どもたちはそれらを自由に持ち出して、自分の創造性を発揮できる。

先日「速く走るモーターカーを作ろう」というテーマで実験が行われた。
広い床に青いシートが敷かれ、その上に数十組親子が座り、モーターカーを作り始めた。
小型モーター、単三電池が各自に与えられ、牛乳パックでボディを作り
フィルムケースで車輪や電池ボックスを作り、モーターと車輪の駆動には輪ゴムをベルトとして用いる。
一時間ほど親子で考えながら作る。

やがて完成し、広い床の上をモーターカーが走り回る。
突然、一人の男の子が、作った自動車を持って私のところに来た。
「先生、いま僕、この自動車をバックさせることができたよ」と言う。
私は驚いた。なぜならわれわれスタッフは、このモーターカーをただ前方に速く走らせることしか考えずに指導していたからである。

これこそすばらしい創造性ではなかろうか。
私は製作に熱中している参加者に呼びかけて、一時作業を中断していただき
この子にどのようにして考え、作ったかを説明し、実験してもらった。
はじめ彼の車は勢いよく前方に走り出した。
次に彼は輪ゴムを外し、8の字形に曲げた輪ゴムを車輪とモーター軸に引っかけて走らせた。
何と勢いよくバックするではないか。

大きな拍手が起こった。誰も考えなかったことを彼は車を作りながら考えついたのである。
「創造性」は自分の手で、頭を使い、考えながら物を作る過程において生じるということがよく分かった。

※ この記事は信濃毎日新聞社様のご協力をいただいて掲載しています。

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