私の心を動かした科学の体験ーその10

「MV-5ロケットを、科学教室のシンボルに」

「南信州飯田おもしろ科学工房」の活動10周年おめでとうございます。
「理科実験ミュージアム」年々順調に発展し
今や南信州のみならず、長野県全域及び他府県まで、その活動が知られるようになったのは誰もが認める所です。
それも日頃のスタッフの、地域の子供たちに、科学のたのしさと不思議さを伝えようとする熱意と
お互いの協力の結果であり、その努力には感謝に堪えません。
この度、活動十周年を記念しておいで館に、大変見事な「MV-5ロケット」の模型が設置され
私も喜びでいっぱいです。
スタッフ全員の熱意と協力のもとに、このような金属製の大きく立派なロケットがすべて自作で
完成品を自動車に皆で積み込み、「おいで館」に運びこんだのは大変素晴らしい事でした。

ここに展示された「MV-5ロケット」の模型は、実物の1/3の大きさで、高さ10m、直径80cmですが
実物は高さ30m、直径2.5mで、宇宙探査機「はやぶさ」を、太陽系の中
3億kmの彼方を飛ぶ小惑星「イトカワ」に運んだ記念すべきロケットです。
それは日本の科学技術の結晶とも言える、世界に誇れるオリジナルな固体ロケットです。
60年前、糸川英夫博士を中心とした宇宙研のスタッフの、ゼロから築き上げた多くの研究の成果が実を結んだものです。
「MV-5ロケット」から太陽系に放たれた「はやぶさ」は1秒間に30kmも飛ぶ高速で
広大な太陽系の中を、7年間という長い期間、60億kmという長い距離を飛び続けたのです。
その為の技術として、優れたイオンエンジンの開発や
燃料を使わずにスピードを増す地球スイングバイの利用など、新しい試みを次々と成功させました。
また、通信途絶、エンジン停止、行方不明など
次々起こるトラブルに対するスタッフによる卓抜なアイデアとその実行
それは日頃のスタッフ間の協力と「和」の精神から生ずるもので
理学者、工学者、企業の技術者の間の和の共有が密で、自由に発言できる雰囲気であったことが大きく作用しています。
無人の小さな探査機による、小惑星のサンプルリターンという、世界の誰もが成しえなかった快挙に挑み
はやぶさを地球に戻すために7年間も、宇宙の彼方の「はやぶさ」を追い
遂に目的を果たしたその不屈の精神は、今後の科学教育の指標として、
学校や自治体共にぜひ取り入れたいものです。

日本のロケットの父糸川英夫博士の強い意志に共鳴したスタッフの努力が実り
失敗を成功の糧として研究に生かし、「これは前例がないからやめよう」というのではなく
「前例がないから我々はチャレンジするのだ」という強い意志の実行を
伝統とする精神こそ、我々も見習い、子ども達に伝えなければなりません。

その第一のものはお互いの「和」です。
自由な討論と、相手の意見に耳を傾け、謙虚に受け止め、自由に意見を述べ、それを直ぐにまとめて実行に移す。
宇宙にただよう微かな電波の中から「はやぶさ」を見つけ、
独特の通信方法を考えて「はやぶさ」をとらえ、遂に地球に帰還させるという奇跡的早業も
日頃つちかった精神が実を結んだものです。
この偉業を成し遂げた宇宙研60年の伝統と、その精神を飯田の科学教育のシンボルとして
宇宙開発において世界に名を残す「MV-5ロケット」に、子ども達を毎日触れさせ、その偉業をたどり、考えさせ
広場で自作のモデルロケットを打ち上げることは大変意味のあることではないでしょうか。

今後とも天文・宇宙の教育は学校においても大きく取上げられるもので
この10年間飯田市を中心とした伊那谷の学校と自治体では「モデルロケット」の製作と打ち上げを授業に取り入れる天文の教育を行っております
すでに4千名の生徒達がロケットを自作し、100mの高さまで飛ばし、パラシュートで回収する実験を行っています。
ロケット教育としては日本一と言っても過言ではないでしょう。
「MV-5ロケット」の展示を機会に、なお一層宇宙・天文・ロケットの教育が充実することを期待しております。

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