東京からの取材

2019年 6月23日 東京から取材がやってきました。
「読書工房」という視覚障害をはじめとするさまざまな立場の人との
コミュニケーションやサポート技術などについて出版する会社です
また、学校図書館や公共図書館に関する本もあります。

全国を回っていろいろな取材をしています。

この日の理科実験ミュージアムは、特別講座で飯田市立図書館とのコラボ
「とぶ飛ぶとぶ」~クジラをとばそう~ です。
理科実験を行ないながら、実験の関連本を読んだり 紹介したり行います。
ガリレオ工房は、この取り組みを「理科読」と名付けました 
 

としょかん通信 ぷらす・あるふぁ

子どもたちが頭とからだを使い 自由に実験できる場を!

南信州飯田おもしろ科学工房  三浦宏子

「後藤道夫さんの故郷・飯田市」

飯田市は、長野県南部に位置し、古くから飯田藩の城下町として、また宿場町として栄えた土地です。古くから公民館活動がさかんな地域としても知られ、市内3か所の市立図書館のほかに、各地区単位で設置されている公民館ごとに図書館の分館があり、開館日は限られていますが、子どものたちにもよく利用されています。

サイエンスプロデューサーとして、全国各地でさまざまなサイエンスショーや出前授業を行い、76万部を超えるベストセラー『子どもにウケる科学手品77』(講談社ブルーバックス)の著者として知られる後藤道夫さんは、飯田市のご出身で、生まれてから小学校4年生まで飯田市内の小学校に通われていました。その後、東京に移られ、東京理科大学理学部物理学科を卒業後、工学院大学付属高校で35年間教鞭をとられました。

「この感動を伝えたい」

後藤道夫さんがなぜ科学教育の道に進まれるようになったかについて、とても印象的なエピソードがあります。中学生の頃、理科の佐藤正義先生が、暗幕で暗くした理科室に、外から一条の太陽光を取り込む。光がプリズムを通ると、きれいな七色に分かれ、白い紙の上に投影された。後藤先生は、その美しい光をみて感動したそうです。また、佐藤先生との出会いが、将来学校の先生になって、こうした美しいものを子どもたちに見せてあげられるような人になりたいと思ったそうです。

1956(昭和34)年、NHKの教育テレビが開局されることとなり、後藤先生は毎月のようにNHKへ行き、実験番組を企画し、ご自身も出演されるようになりました。

いまテレビやサイエンスショーで活躍されている米村でんじろうさんは、その頃のテレビ番組を見ていたようで、後藤先生はその分野でも草分けということが言えると思います。

後藤先生は、その後、理科教育の視察ツアーを計画し、団長としてヨーロッパ各国に出かけ、イギリスで毎年開催されている科学実験講座を日本でも開催するべきだと考え、1992(平成4)年第1回「青少年のための科学の祭典」を開催し、第1回から第4回までの全国大会実行委員長を務められました。この祭典は、いまでも日本各地の都市80箇所で開催されています。

実験を子どもたちの身近なところで

後藤先生は、1999年71歳の時「故郷の子どもたちに科学の楽しさを伝えたい」と、知り合いを通じて、飯田市教育委員会に申し入れをしました。突然の申し出に飯田市は、驚きましたが、すぐに、小・中学校の巡回科学実験教室を始めました。当初は、飯田市からの予算はなく、後藤先生が持参した実験道具を使い、交通費・宿泊代まで自腹という形でしたが、飯田市は、後藤先生の”熱意”を受け止めて、後藤先生をサポートする科学教育ボランティア団体(南信州飯田おもしろ科学工房)を作り、科学実験教室推進事業として予算つけをしました。

また、後藤先生は、平成記念かざこし子どもの森公園の初代公園長に任命されると、公園内にある「おいで館」で理科実験ミュージアム(4月から11月までの週末に定期開催)の活動を始められました。私は、後藤先生に「こんな交通の便の悪いところに子どもたちは来ないですよ」と言ったことがあります。すると、後藤先生は「子どもたちがいつ来ても良い、自由に学べる科学の拠点がほしい、僕はそう思って飯田に来ました。1人でも2人でもいいんです。おいで館で自由に材料を選び、自由な時間を過ごすことにより、子どもたちの想像力がのび、自由な発想が浮かぶ。子どもたちに科学の美しさ、楽しさ、感動をあたえることによって、科学の好きな子どもたちを増やしていきたい。保護者が良いと思えば、どこにでも連れてきます」とおっしゃいました。

後藤先生の志を受け継いで

南信州飯田おもしろ科学工房は、現在56名のスタッフがボランティアで活動を続けています。地元の高校生や信用金庫職員などもスタッフとして関わっています。最近では、飯田市立図書館の司書の方にも理科実験ミュージアムにご協力いただき、実験に関連する図書を持ち込み、その場で貸出できる体制を整えました。

また市立図書館や公民館に併設されている図書館の分館でも、簡単な実験や工作をする機会をいただいています。

2017年12月22日、後藤道夫さんは90歳で亡くなられましたが、後藤先生がつねづねおっしゃていた「これはどういうことなのかなと、自分の手を使って確かめ、自分の頭で考えよう』という思いを、これからも受け継いでいきたいと考えております。

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