大勢の高校生に囲まれてにこやかな表情を見せているのは、後藤道夫先生です。朝日新聞社の企画「オーサービジット(作者と話そう)」が、平成19年1月31日(木)に長野県立飯田高等学校で行われ、後藤先生は講師として飯田にやってきたのです。
「オーサービジット」とは作者がおとずれ、作者ならではの授業を行うという朝日新聞の企画で『2007年の講師』として後藤先生は各地をまわっていらっしゃいます。
この日は飯田高校をおとずれ、後藤先生がここ数年間にうけた科学に関する「感動」4つをテーマに授業をされました。
後藤先生が大きな感動をうけたもの、それは「宇宙」。先生はガリレオが400年も前に行った木星の衛星観測を追体験したことで、ガリレオの偉大さをあらためて思い知らされたそうです。その後も先生はずっと木星観測をされているそうです。
後藤先生は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を呼んで、その宇宙観にも大きな感銘をうけたそうです。賢治が描いた100年前の宇宙観と、ハッブル宇宙望遠鏡などが解き明かした現代のそれとを比較することで、人々が宇宙に描いてきた夢と科学の発展を学びました。学生さんたちも神妙に聞き入っているようですね。
宇宙空間のような超低温の環境ではどんなことが起きるのか、地上で体験してみましょう。たとえば二酸化炭素はどうなるか? ジュワービンの中に空気袋を入れて確かめてみす。
二酸化炭素は白い固体に変化しました。これはドライアイスです。火星の南北両極には、このようなかたちでドライアイスが存在します。極冠といわれています。
物質がとる3体(固体・気体・液体)の実験です。ビニールチューブにドライアイス(固体)をいれ、両方の口をふさぎます。やがてドライアイスは気化をはじめ二酸化炭素(気体)にもどりはじめます。しばらくすると、チューブがふくらんできました。チューブの中の圧力がたかまってきたからです。するとふしぎなことにチューブの中には液体があらわれます。これが液体二酸化炭素です。やがて圧力にたえきれず、チューブは大音響とともに破裂しました。
銅製の容器に液体窒素を入れると、まわりからポタポタと液体が落ち始めます。この液体はいったいなんでしょうか? 答えは液体酸素。超低温下では、空気中の酸素ですら液体になってしまいます。大阪大学の化学の入試問題にかつて出題されたことがあるそうですよ。
超電導ジェットコースターの登場です。ネオジム磁石をうめつくしたメビウスの輪型レール上を、超電導滑走体が浮上して走行します。地上では液体窒素で冷却しなければなりませんが、これがもし極寒の宇宙空間だったらどうでしょう? レールとの摩擦はありません。一度動かし始めれば、永遠に軌道を回り続けるのでしょうか?
超電導状態で起きるマイスナー効果により滑走体が浮上しています。実にふしぎな光景です。指先ではじけば、すべるように移動します。実際に目の前で見てみると、この現象には本当に感動します。
光のスペクトルを見ることで、星の温度やガスの成分などを調べることができます。回折格子を使って光のスペクトルの違いを見る実験です。光によって見え方の違いがはっきりとあらわれます。最初に気がついた人はすごいですね。
星座早見盤を使って、天体観測の方法を学習しています。ガリレオが発見した木星の衛星を、みなさんもいっしょに観測しましょう。
まとめのお話と、学生さんからの感想をいただいて、オーサービジットが終了しました。本やテレビで知っていても、実際に目の前で見ること、体験することが重要なのですね。